理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
バゲットを受け取り、半分にカットして、トースターで温める。


こうして、大きめに切って温めてから、適当な大きさに切ると、皮のバリッとした食感と、中のふんわりした食感の両方が楽しめるからだ。


スープをスープボウルに注ぎ、アクアパッツアを皿に盛りつけてパセリを散らす。


温まったバゲットを切り分けて、エプロンを外し、テーブルに料理を並べると、

「30分かからずに出来上がったわね」

と、マキ先輩が感心してくれる。


自分としては、たいした物を作ったわけじゃないと思うけれど…

褒めてもらえるのは、素直に嬉しかった。



ロウテーブルを挟んで向かい合わせに座り、二人そろって、

「いただきま~す」

と、手を合わせると早速、

「トマトの酸味が決め手ね!」

マキ先輩が、アクアパッツアのソースを一匙すくって味を確かめる。


「そうなんです。
後は、セロリみたいに香りの強い野菜も合いますよ。

ソースをバゲットに浸して食べると、また美味しいんです!」

女二人の食卓は、会話が途切れる間もないほど賑やかなのに、不思議と料理はどんどん減っていって…

そして、ワインも同じペースで減っていくから、尚更お互いを饒舌にさせた。



「それで…
今夜は何の用だったの?

大荷物抱えて、明日はココから出発するつもり?

それともまさか、洋介君とケンカして、旅行に行けなくなったとか?」

なかなか鋭い読みではあるけれど、俯きながら首を横に振る。


「…ケンカなんかじゃありません。

私…洋介とは、ほとんどケンカなんかしたこと無いんです。

だから、上手くいってるって思ってたんですけど…」

そこまで言うと、また…
ボタボタと涙が落ちてきた。
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