理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「O中の坂本 彩。
中学最後の地区大会で脱臼したの、俺、見てたんだ」

「…えっ!?」

ついさっき思い出していた話が、彼の口から出てきたコトに動揺していると…

「あの時の涙が、すっごい綺麗で忘れられなくて…
だから入学式で再会できて、すっごく嬉しかったんだ」

思いもよらない言葉へと繋がっていく。

「…好きなんだ」

信じられないその言葉に、どうリアクションすれば良いのかも分からず、ただ固まっていると…

「なぁ、俺と付き合って…

俺のこと、慰めてよ。

お前にしか、俺の悔しさは分からないから…」

そう言って、抱きしめられる。


抱きしめられる腕に徐々に力が籠り、すがるように首筋に顔を埋められると、思わずその背中を擦ってしまう。


ゆっくりと首元から上がる彼の唇が…

私の唇へと重なり、驚いて身を捩ると、離さないとでも言うように、強く抱きしめられ、もう一度…

「好きなんだ」

と、繰り返される。


『………本…当…?』

驚きと疑心暗鬼に頭を悩ませたコトで油断が生まれ、少しだけ抵抗する力が弱まった途端…


再びを重ねられた唇から、割り込んできた生温かいナニカに身を硬くし…

「んんーっ」

と、叫ぼうと首を振って抵抗する。


強い力で顎を掴まれ、脅すようにガクガクと上下に揺すられ、髪を掴んでグッとひっぱり、彼の顔を見上げさせられると…

「鼻で呼吸して。できるね?」

その優しい口調に、背筋が凍るような恐怖を感じて黙って頷く。


震える私に、何度も何度も唇を押し付けて、舌を貪るように絡めると…

8人がけの大きなテーブルに押し倒し、胸へと手を伸ばしてくる。


抵抗など無駄だとばかりに、私の気持ちなんかお構い無しに、乱暴に揉みしだかれ、痛みに眉を寄せる。


下着の中へと進んできた手に、これ以上は許して欲しいと、バタバタと足を振って抵抗する。


そんな私の願いが通じたのか、ゆっくりと彼の掌は撤退し、安堵したのも束の間…

「好きなんだ」

と繰り返し、唇を重ね舌をねじ込む。


分かったフリをしながら、私の気持ちなんて微塵も感じていないその姿に、諦めの気持ちへと変わりだした頃…

再び、下着の中へと進みだす掌に、抵抗すると…

覆いかぶさっていた躰を離し、私の上から下りていく。


『今度こそ、解放される』

再び訪れた安堵に、大きく息を吐くと…

突然躰が反転し、うつ伏せにされ、躰を引きずられて下半身がテーブルからずり落ちる。


目まぐるしい変化に、クラクラと眩暈がする頭を抑えようと、手を伸ばしたその時…

乱暴に下着を下ろされ、予想できうる最悪の状況が頭を過ぎり…

「お願い…やめて…」

震える涙声をなんとか搾り出して懇願する。


そんな私の姿を冷酷な笑みで見下ろし…

私の制服スカートのポケットからハンカチを取り出し、丸めて口に押し込むと…

「んんーっっっ」

襲い掛かったのは、この世のものとは思えない絶望を伴う痛み。


くぐもった叫び声に、ハンカチの上から手を当て、躰を引き裂かれるような痛みを、何度も何度も無理やり押し付ける。


気が済んだのか、果てて離れた彼に、

「ひどい…」

と、精一杯の罵りの言葉をぶつけるも…

「ごめん。でも、好きなんだ。
この責任は取る。だから、ずっと側にいて」

抱きしめられ、重ねられた唇に、抵抗する気力を失う。


『好きなら何をしても良いワケじゃない』

そう言って、責め立てやりたいけれど、逃げ場のないこの状況で、あの惨劇が繰り返されるのも、これ以上惨めな思いもしたくない。


自分を失うほどついているのなら…

自分をコントロール出来ないほど、私のコトを好きだと言うのなら…

これも一つの選択肢かもしれない。


『同級生にレイプされた可哀想な女』
になりたくなくて…

彼と付き合うコトを承知し、『恋人同士の営み』に、記憶を書き換えた。
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