理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
荒い息が整わないまま、虚ろな瞳でイッセイを見上げると…

穏やかな笑みを浮かべながら頭を撫で…

おでこにチュッ、チュッと、何度も何度もキスを降らせる。


その優しさにキュンとしながらも…

「ズルい…」

と、呟いてしまう。


「ズルい?何が?」

目を見開くイッセイ。


「私は…こんななのに…
イッセイばっかり…余裕な顔で…」

不満で尖らせた私の唇に、覆い被さる唇は…

重ねたと同時に、根こそぎ奪うかの様で…

呼吸もままならない程の圧迫感に…

思わずドンドンと、その背中を叩く。


バッっと離れたイッセイの瞳は切なげで…

「余裕なんかない…」

呟く様な小さな声。


「イッセイ…?」

不安げに見つめると、刹那さを振り払うような、明るい表情で…

「余裕なんか無いわ。
ホンマはもう、欲しゅうてたまらんのやで。

だいたい、ズルいのはどっちや?
俺を置き去りにするなんて」

真っ赤になる私にまた、ニヤリと、あの悪い笑顔が向けられた。
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