理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
ベッドを下りると、靴をクローゼットにしまう。


私が握りしめたコトで、シワが寄ってしまったシャツを脱ぎ捨てると…

鍛えているのか、綺麗なラインの上半身が現れた。


「綺麗…」

思わず呟く。


人の着替えをマジマジと観るなんて、どうかと思ったけれど…

恥ずかしがる素振りも、嫌がる様子も無く…

「狂言師なんて、もっとヒョロヒョロやと思っとったんやろ?

屋外でも地声で演るから、腹筋鍛えな声が通らへんし…
舞台の上での基本姿勢は中腰やから、結構、体力使うんやで。

独りで30分以上、謡って舞う演目もあるしな」

そう話しながら、ジーンズをスルスルと脱ぎ捨て、ボクサータイプのトランクスを下ろす。


「きゃあっ」

思わず目を逸らす私に…

「そんな驚かんでも…
初めて見るワケでもあるまいし…」

呆れ顔でベッドに上がってくる。


「だっ、だって、おっきい…」

痛みを想像しただけで、無理だと首を振る。


「いくらなんでも驚くほど大きゅうはないわ。
標準位やろ?」

『何言ってんだ?』

みたいな呆れ顔のイッセイに…

「だって、大きいって言ってた洋介より、おっきいもん!

洋介のだって毎回痛かったのに、そんなのもっと痛いに決まってるじゃん!
絶対、無理なんだから!!」

涙目で、思わずヒステリックな声をあげてしまう。












……………あれ?


わ、私、今、『洋介』って言った。。。

ベッドで『洋介』って、他の男の名前言っちゃった。。。


失礼だよね?


いくら何でも、ドン引きだよね?


あたふたと慌てる私に…

ピシッと、デコピンが飛んできて…

「ほぉー、『洋介』ねぇ。
ベッドの上で、他の男の名前が出るやなんて、たいした余裕やな」

笑顔だけど、決して目は笑ってない。
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