理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「一人旅ってコトは、独りで京都に来たんか?」

当たり前のコトを聞くイッセイに頷くと、
『これ位のコトで、どうして?』
と思うほど、嬉しそうな笑顔を見せる。


「ほうか。
ほな、いつまでコッチにおるん?」

「後、5日くらいかな」

そう答えるとイッセイは、漆黒に輝くの瞳で思案するかのように一瞬、宙に向け…

「分かった」

と、一人で納得したように頷く。


「狂言観に来たのんは、観光の一環?
もう色々廻ったんか?」

「市場には行ったけど、他はまだ…」

「ほな、明日行くで!
案内するわ」

突然の提案に、びっくりして目を見開く。


一晩限りの関係に、翌日の観光案内なんてオプションが付くなんて、考えもしなかったから。


「えっ!?だって忙しいんじゃ…」

戸惑う私をよそに…

「うん、普段は忙しいで」

サラリと流し、更には…

「せやけど、明日は午前中の稽古が終わったら、午後は予定無いしな。
昼飯、一緒に食べて出かけよ」

と、さっさと決めてしまう。


「えっ!?決まりなの?」

「せや、決まりや。
ちなみに、朝も夜も一緒に食べるで」

未だ覚悟も決まらずに、観光案内の提案に返事もしていない状況のハズなのに、話はどんどん進んでいってしまう。


「ほんで、この部屋に帰ってくる」

「この部屋に!?」

続けられるイッセイの言葉に、またまた度肝を抜かれていると…

「嫌なんか?
ほなやっぱりスィートの方が…」

なんて言い出すから…

『そういうコトじゃないって!!』

と、あわてて首を横に振る。


「嫌じゃありません!!
この部屋で十分です!!」

「ほうか?ほな良かった。
3泊にした甲斐があったわ」

イッセイは、してやったりといった感じで、ニヤリと口元を緩めた。
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