理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「3泊!?」

驚くコトばかりで、言葉の意味を理解する処理能力が追い付かないまま、オウム返ししてばかりの私を…

「せや。
ホンマは夜も朝も昼も、時間なんか忘れるくらい抱き合うていたい思て、部屋を取ったんやけどな…

ああ、そっちの方がエエ?」

「そんなには無理です!!」

焦るとトンチンカンな返答をしてしまう私を面白がって、からかうように煽っては、ケラケラと声を上げて楽しそうに笑う。


「ほなやっぱり観光でエエな?」

笑いすぎて目の端に溜まった涙を、長くて綺麗な指で掬うイッセイの話術にハマり…

「はい。お願いします」

つい、返事をしてしまったのだった。



そんなじゃれあいに一息つくと、思った以上にイッセイの顔が近いコトに気づいて、なんだかドギマギしてしまう。


近くで見ると、イッセイのサラサラの黒髪も、漆を塗り込めたような瞳も、一際艶めいて見える。


吸い込まれそうな漆黒の瞳に、うっとり見とれていると…

「なぁ、気になってんけど…」

イッセイの言葉に、
『いくらなんでも見つめすぎたかな』
と、ドキッと緊張が走る。


「なんで敬語なん?」

「あっ…えっと…」

なんだ、そんなコトかと胸を撫で下ろしながら…

「あんな畳みかけるようなテンポで会話するのは初めてだったから、つい圧倒されちゃって…」

苦笑いした私を、『アハハ』と軽く笑い飛ばしたイッセイは、突然…

「アヤ、可愛い…」

って言いながら、唇に軽く触れるだけのキスをして…

私の額に唇を寄せたまま、ギュッと抱きしめると…

そのまま、スースーと寝息を立て始めた。



私はというと…

初めての腕枕は心地良かったけれど…

こんな風に誰かに抱きしめられて眠るのは、子供の頃以来だったから…

心臓がドキドキして、どうしていいか分からなくて…

それでも疲れていたからなのか、イッセイの心音を聞いているうちに、いつの間にか眠りへと落ちていった。
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