理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「行きたい場所はもう、決めたんか?」

食後の紅茶を飲み干したイッセイが、尋ねる。


「色々迷ったけど、清水寺に行きたいな。
やっぱり有名所だし」

そう答えた私に…

「うん、分かった。

12時には迎えに行けると思うから…
ホテルか観光か、ドコにおんのんか教えて」

とだけ言うと、クローゼットから手荷物を取り出し…

「ほな、行ってきます。
また後で」

そう言うと、急いでいるハズなのに…

抱きしめられて、唇が重なる。


ほんの数秒、唇が触れ合っただけのキス。


目を開けると、ニヤリと笑ったイッセイが

「ごっつい残念そうな顔してる。
寂しい?

…それとも、もっと激しく?」

なんて聞くから…

「全然、寂しくなんかありません!!
ほんの数時間でしょ」

と、口を尖らせてムキになりながら言い返す。


その尖った唇にもう一度、チュッっと軽いキスをして…

「寂しゅうないなら、やっぱり激しくして欲しかったんやな?」

と、ニヤリと笑っている、イッセイ。


私が言い返す前に、後頭部を支え、背中を抱きしめて一気に舌を割り入れてくる。


私の舌に触れたのを受けて、私もイッセイの舌を求めて絡めた。


『もっと…』

そう思った瞬間、パッと顔を離すイッセイ。

『何がいけなかったの?』

不安になる私の額に、チュッっと唇を寄せ、黒塗りの瞳でジッと見つめてくる。


『あぁ私、この瞳に弱いんだ…』

そうは思っても、目を逸らすことなんか出来ない。

「…イッセイ…」

名前を呼ぶと、ジッと真っ直ぐに見つめたままの彼が…

「もっと俺を欲しがり。
ほんで、俺にキスしたくてたまらんようになって。
俺に抱かれたいって思て…
会われへん間も俺のコト考えてて」

そう言って、ニッコリ笑うと、もう一度、触れるだけのキスして…

「いってきます。
ナンパと置き引きには気を付けて」

と言いながら、部屋を出て行った。


部屋に一人残った私は、まるで躰に種火を残して行かれたかのように…

熱くなった躰と心を冷やすために、自分の部屋へと戻り…

躰が潤んでいたコトを思い出して…

シャワーを浴び直して着替えた。
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