理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
このままココで、イッセイを待つべきか…

1時間もあれば、回れそうな所なのか…

見当がつかずに、決めかねていると…

突然、携帯電話が鳴り、登録していない番号を表示する。


ビクッと一瞬驚くも…

昨日、イッセイから貰ったメモに書かれていた番号だったと気づき、慌てて電話に出る。


「もしもし…」

「…もしもし。
私、先日お会いしました笹森逸晴の兄で、秀晴と申します」

心臓が急激に高鳴る。


昨日の楽屋での一件を、きっと叱られるに違いない。


覚悟を決めて、口を開くも…

「はい…あの…

昨日は御挨拶もせずに、すみませんでした。
私、坂本彩と申します。

それから、あの…
昨日は、イロイロ…申し訳ありませんでした」

携帯を手にしたまま、頭を下げる。


「エエんです、エエんです。
そんなコトは、お気になさらんでも。
今日の用件は別ですし。
彩さん、言わはりましたかな?」

カラカラと笑い飛ばし、優しい口調で話かけて下さる。


「はい」

「今晩、逸晴とウチの嫁も一緒に、4人で食事でも、どうですやろ?」

「………えっ!?」

予想もしていなかった、突然の提案に…

一瞬、何を言われているのか理解できない。


「色々と…お会いして、お話したいこともありますさかい」

秀晴さんの口調は、穏やかで柔らかい。


だけど、色々ってコトは、やっぱり…

『ちょっかい出すな』って、釘を刺されるのよね?


言われなくても、自分が一番よく分かってるコトを…

改めて他人から言われるのは、やっぱり辛い。


けれども、今すぐは離れがたくて…

どうしようかと、答えられずにいると…

「兄貴っ!!
人の携帯で何してんねん!!」

イッセイの怒鳴り声が響き、思わず携帯を耳から離す。

「ほな、お待ちしてます」

と言うと…

そのまま電話を切られてしまった。
< 70 / 151 >

この作品をシェア

pagetop