理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
事態が、よく飲み込めないままだけれど…

どうするべきかだけは、ちゃんと考えておかなくちゃいけない。


やっぱり…

お兄さんには、キチンと頭を下げて、謝るべきだよね?


でも、勝手なコトして、迷惑かけたりしたら困るし…

後で一応、イッセイに相談してみよう。


そんなコトを考えていると、再び同じ番号から電話が鳴る。


「…もしもし」

「もしもし、アヤ?
さっきは兄貴がゴメンな。
ちゃんと俺から言うとくから」

受話器の向こうの声は、なんだかすごく焦っているようで…

やっぱり、昨日のコトを咎められたのかもしれないと、心苦しくなる。


「ううん、私…
ちゃんとお会いしたい。

今夜ご迷惑でなければ、時間と場所を聞いておいて」

二人で犯した罪を、イッセイ独りに背負わせたりなんか出来ない。


思い切って決断した私に…

「…エエんか?」

と、心配そうなイッセイの心遣いが、優しく響く。


「うん」

だって、あの瞬間は…

間違いなく、私も望んだ時間だったから。


「アヤがエエなら…

あっ、そういえば今ドコ?
俺もう出られんで」

話題を変えるように、そう尋ねたイッセイに…

「国立博物館」

と、短く答えると…

「分かった。着いたら電話する。
建物の中でも構へんから、涼しい所で待っとき」

と言われ、途切れたままの話を、これ以上する気がないコトを感じる。


なんだか、まるで…

『どんな理由であれ、家族に会わせられるような関係じゃない』

って否定されてるようで…

頭では分かっていても、やっぱり辛い。


「…うん」

小さく頷いた、私の耳に届いたのは…

「それじゃあ。×××」

小さく響く、リップ音。


…あれ?

なんか今、チュッって音が聞こえた様な気がするんだけど…

気のせいだよね?


私、そんなに欲求不満なのかな!?


恥ずかしさで赤くなる顔を、パタパタと扇いだ。
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