理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
付き合いの長い洋介は、私のドコが弱いのかもよく知っていて…

抵抗の言葉を口にする前に…

ゴツゴツとした、男らしい節の指が、私の顎を掴む。


私の躰を引き寄せるように、そっと斜め後ろに向かせると…

洋介の顔が近づいて来る。


「…待って。
まだ洗い物が…」

「後で良いだろ?
俺の言うコトが聞けないのか!?」

低く唸るような声色に、機嫌を損ねたコトを感じ、思わず恐怖で躰が強張る。


洋介は、そんな私の反応なんかお構い無しに、おとなしくなったコトで満足げに笑いながら唇を重ねてくる。


含みのある笑顔を携えたままの洋介は、何の戸惑いも見せずに…

サマーニットの背中から、肋骨をなぞるように忍び込み…

同時に、膝丈の紺と白のマリンストライプ柄のスカートの中にも、手を滑らせる。


一つ、一つの動作に、戸惑うように躰を震わせる私は…

抵抗する代わりに、鼻にかかった甘い吐息を漏らす。


『これは、義務。
恋人としての勤め』


そう自分に言い聞かせ、強張る躰から、力を抜き…

深呼吸して、覚悟を決めようと思ったその時…


突如襲った、無理やり躰を左右に引き裂かれるような感覚。



「んんっっっ」


思わず飛び出す声にならない声。


そんな私の様子に、驚き慌てた洋介は、大きな手で私の口を乱暴に押さえつけるように塞ぐ。


息苦しくて、涙を浮かべて見上げると…

「静かにしてろ!
壁、薄いんだから響くだろ」

苛立つその表情と共に、グッと力が籠る口元を押さえつける掌。


もう、黙って耐える以外の道は無くなる。


体の中を串刺しにされた様に感じる、圧迫感に…

『痛い』

『苦しい』

『早く終わって』

と、愛し合う者同士の営みとは思えないような、否定的な言葉しか浮かんでこない。


それでも…


「アヤ…そろそろ…」

洋介の声に弾かれる様に、

『でも、彼氏なんだから…』

心の中で唱える。


そう、このヒトは、私の大切な彼氏なんだから…

「うん。私も…」

なんて、今日もまた…

艶技と言う名の、嘘をついた。
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