中指斬残、捌断ち儀
2002年~
(一)
夏休み前の一週間は、クラスのみんなが口々に「どこ行く?」「遊びまくろうっ」「家族で旅行行くんだー」と、夏休みの予定の先走りばかりをしていた。
初めての夏休みだからこそ、ああも意気揚々でいられるんだと思う。
かくいう僕も、少なからず楽しみでもあった。
春夏秋冬の家いたって、何ら面白いことなんかないけど。
『自由研究で私を、か?ああ、構わないよ』
夏休みの宿題たる自由研究で、僕は五十鈴さん――フクロウを題材にしようと思っていた。
何をどう調べるかはまだ決めていないけど、『とりあえずは五十鈴さんと一緒にいたい』ためが約束を彼女と取り付けたのだった。
みんなが休みにどこ行くここ行くの話で盛り上がるなか、僕は密かに五十鈴さんと遊べる(自由研究だけど)ことに胸を膨らませていた。