中指斬残、捌断ち儀
僕はその『よい子』が性格的にも馴染むものだった。誉めて伸ばす、だなんて言葉があるけど正にそれ。
もっと誉めてと、僕は『よい子』であり続け、親も僕の願い通りに誉めて愛してくれた。
平々凡々でも、幼稚園児にしてみたら、家庭こそが世界。マイホームで家族一同、ほのぼのとできることに僕はこれ以上ない幸せを感じていたと思う。
――思う、だ。
幸せだ、と断定できたなかったのは、幼少期の記憶が曖昧な上に、今現在、僕は“この時までの家族”に何の思い入れもなくなっていたので、思い出しづらい。
“嘘のような時間”、今の僕があの時の幸せを思い返すと真っ先にそんな言葉が出てくる。
今が不幸すぎると嘆くわけでもないが、あの後に起こる様々な“災難”が、僕に五歳の記憶を“夢のよう”だと曖昧にしてしまう。