中指斬残、捌断ち儀
「それじゃあ……」
「五十鈴さんの価値観にある『笑顔』でなくとも、案外、そいつは楽しんでいるものだ。“五十鈴さんが思っている以上に”。
その『笑顔』を出したいなら――閉じ込めた感情を引き出すには、誰かの想いが手っ取り早い。他人に迷惑をかけたくなかろうとも、大切に想われて嫌な気持ちになる奴はいないし――家族なんだろう?なら、そばにいてやれ。いてやらなきゃ、ますますもって『心が要らなくなってくる』から」
「ああ。そうか、そうだな。渉を笑顔にするには、私から一線を置いてはいけない」
「……五十鈴さんにはお節介の部分があるから、あまりやり過ぎるなと言いたいが、まあその想いの心意を分からないことはないだろう。他人を気にする奴は、他人の気持ちに敏感だから」