中指斬残、捌断ち儀


『そりゃあ、あれだわ。わたるんがますますもって、化けもんになったってことだな』


何気なしに聞けば、藤馬さんは言う。


『幽霊?シシッ、それよりも、もっとタチわりいもんだ。てめえの目に移るやつは、必ず“今から誰かを殺そうとしているもん”だからな』


曰く、憎悪(呪物)だと。


赤い鳥は、誰かに殺され遺棄された人の肉を食い、殺された人の憎しみが移った姿。カラスになって復讐しようとしている。


白い縄は、そのサラリーマンのせいで解雇(クビ)となった者が逆恨んでいるから。

水溜まりの眼球は、轢き逃げされた子が今もあの場で犯人の車を探しているから。

麻袋の女性は、手癖の悪さで離婚された腹いせに元夫を殺したがっている。


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