中指斬残、捌断ち儀
変わった眼であった。
染色でもされたような濁った黄色い硝子体に、瞳孔に至っては“二つあった”。石の欠片ほどに細い孔。亀裂が入ったかのような細かい溝入りの虹彩に囲われた瞳孔がぶれたかのように二つ並んでいる。
薄気味悪い子だ。
腹を痛めた我が子ながら――いや、だからこそ、自身の腹の中にいた胎児がこんな醜い目をしていたのに娘は吐き気さえも覚えていた。
豚が喧しく騒ぐ。
それに比べて赤子は静かなものだった。
産声が、ない。
目は開いているのだ、意識はあるし生きている。しかしながら、生誕に歓喜するような泣き声がこの赤子からは一言たりともなく。
『あ、あ、あ゛あああぁ!』
産声めいた鳴き声をあげたのは、その母たる娘であった。