勿忘草
「洸くん。
洸くんは、将来何になりたい?」
「俺?俺は、医者かな」
「いい夢だね。
そうか、わたしの病気を治してくれるのかな?」
「バーカ。
お前は、俺の親父が今すぐ治してくれるよ」
そう言って、俺は詩乃の髪をボサボサにするほどに撫でた。
「…ふふふ…。そうだね」
俺は、そんな詩乃に妙な胸騒ぎがした。
あまりにも悲しそうに笑うから。
その雰囲気に、俺はそれ以上何も言えなかったんだ。
――何も言えなかったんだ。