勿忘草
勿忘草
あの花の名前を。
* * * * *
いつものようにベンチにもたれて、木漏れ日も見つめていた。
「洸くん」
そんな俺の頭の上から、覗き込むように詩乃が現れた。
顔が、近い。
「おい、驚くだろっ!」
慌てて詩乃を振り向く。
ドキッと高鳴った胸の鼓動を、ごまかした。
「ふふふ、すまないな」
そう言って詩乃が笑うと、かすかに花の香りがした。
「ねぇ、洸くん、知ってる?」
そして詩乃は、花壇に植えられた花を指差した。
「このお花、勿忘草って言うの」