勿忘草
詩乃は呼吸器系の慢性的な病気だったらしい。
手術をすれば治るものの、長年手術への恐怖から踏み出せずにいた。
しかし、いきなり手術を受けると言い出し、もっと設備の整った病院での手術の予定がされていたらしい。
「本当に、いきなりだった。
お前と会った日、あの子は手術を受けたいと言った」
「…どうして…」
「さぁ、お前が一番理由を知っているんじゃないか?」
「じゃあ、…どうして何も言ってくれなかったんだ…」
俺は、拳をきつく握りしめた。