勿忘草
出逢い






あれから、もう8年の月日が流れた。

それなりに楽しい人生を送ってきたつもりだし、充分だとも言える。


しかし、詩乃との思い出は色褪せずに、今でも思い出すたびに胸が痛くなる。




あの時、詩乃の病状を聞いていたら。

あの時、淋しそうな顔の理由を聞いていたら。

あの時、躊躇せずに抱き締めていたら。

あの時、もっと早く勿忘草の花言葉を調べていたら。

あの時、詩乃が好きだと気づいていたら。




今でも、詩乃は隣で笑っていただろうか。

少なくとも、こんなに後悔はしていなかっただろう。






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