勿忘草




そんな親父に荷物を届けるために、病院の中庭の大きな木の木陰になったベンチに腰を掛けた。

ここで待ち合わせたのだ。




しばらくしてやって来た親父に、立ち上がって荷物を渡す。


「やぁ、すまないな、洸。」

「本当だよ、勉強中だったのにさ」


全く悪いと思っていないだろう親父は、ははは、と笑うと空を見上げた。


「こんな天気のいい日には外に出ないとな。
病は気からという言葉があるだろう?だから、お前も…」

「患者、待ってるんじゃない?
早く行きなよ、父さん」




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