勿忘草





ずっと、忘れようとしても忘れられなかった。

俺はこの花言葉に縛られるように。

でも、きっと、この瞬間のために。




「“私を忘れないで”…、だろ?」



目の前のその人は、やはり少女のように幼い。

変わらず大きな目に、いっぱいの涙を溜めている。



「俺は見た瞬間分かったのに。
ひどいな、詩乃」


「……洸…くん?」




その声で、俺の名前を呼ばれれば。

俺の中の何かが切れた。






< 32 / 33 >

この作品をシェア

pagetop