勿忘草
「少年よ、君はなんてつまらなそうな顔をしてるんだい?」
突然、空から声が降ってきた。
辺りを見回せど、人影はない。
「ふふふっ」
あ、と思った。
俺の座るベンチに木陰を作る、大きな木。
そこから、鈴の鳴くような笑い声がする。
見上げるが木漏れ日が眩しくて、よく見えない。
―――ガサガサ、ドタンッ!
その大きな音に驚いて前を見れば、小柄な少女が立っていた。
「わたしは、この木の精なのです」
にこり、と笑って少女は言った。