マザコン狩り
男は未だに決断できずにいた。


できるはずがなかった。


どちらも大切だからだ。


「…私が…なるわ…」


いつのまに目を覚ましていたのだろう。


そういったのは男の彼女だった。


「私…充分すぎるくらいに幸せだった。だから…私…二人のためなら、死ぬことなんて怖くない。」


「ダメよ…私はあなたに、冷たくしてきた。この子が他の人を愛することに妬いてたのね。変なの、私たちは親子で、あなたたちは恋人で、全く違うのにね。だから、これは罪の報いと思って受け止めるわ。」


「お義母さん!!」


「ありがとう…お義母さんと呼んでくれて。…さぁやりなさい!!」


「どうやら…決まったようね。」


「お母さんに手を出したらただじゃおかないから!このイカレあばずれ女!!あんたなんか地獄に堕ちろ。さぁやりなさいよ私を!!憎らしいでしょ。この私の美脚と長い腕が。デブでブスなあんたには手に入れられない物を、私は持ってる。切り落としなさいよ。私はあんたと違って手足がなくても、美しいのよ!!」


彼女は可能な限り女を挑発した。


矛先を自分に向けるために。


「…デブ…ブス…私が…。」


「おまけに短足。」


「殺してやる。」


女は電動ノコギリのスイッチを入れた。



彼女は、男の方をみた。


「今までありがとう…愛してた。」


そういってほほえむ。


「ウワァぁー!!!!!!!!」


ノコギリが、彼女の腕を切断した。


二人はそれを、ただじっと見ていた。
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