マザコン狩り
部屋に戻された男は、何も言わなかった。

翔太も、どう声をかけていいのか分からなかった。


もし自分なら…。


ふと考える。


きっと百合も同じ決断を下すだろう。


自分たちを…守るために。


手足をなくしたその女性は、無造作に転がされていた。


恋人の切断された四肢を、大事そうに持つ男を、みんな哀れみや、不気味な物を見る目で見ていた。


「気持ち悪いんだよ!!捨てろよそんなもの。」


1人の男が罵声を浴びせる。


便乗して何人かが、同じ事を言った。


男はずっと黙っている。


それに腹を立てたのか、1人の男が、腕の一本を取り上げ、折って投げつけた。


「うわぁ…触っちゃった。」


男は静かに立ち上がると翔太の方へ歩み寄った。


「ちゃんと守ってて。」


そういって残った手足を渡す。


翔太はおそるおそる受け取った。


その冷たさに驚く。


男は、腕を折った男を殴りつけた。


血だらけで意識がなくなっても、殴り続けた。


みんなストレスでおかしくなってる。


翔太は、冷静にそれを見ながらそう考えていた。
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