夜兎
本編Ⅲ
① 再びきなこ
その頃。…兎川村から遠く離れた『きなこ』劇場。稽古場にて。
--------------------------
佐々木「ハァ…。舞台は血まみれ。俺達もボロボロだし、紫苑さんと篤志さんは行方不明になっちまって。これからどうしたらいいんすかね〜。」
蓮が弱気になってぼやくのも、無理ないだろう…。
大事件の起きた昨日の定休日。その翌日、劇場は荒れ果てていた。
運よく近くのホールが空いていたため 今日の公演自体は中止せずに済んだが…
お客に対し、いつもどうりの芝居が観せられず、ミスも目立った。
一人無傷だった池堀に起こされ、皆が目覚めた時には、何者かによって傷の手当がなされており、傷の悪化は免れていた。
だがそれでも、彼等が受けた身体的、精神的なダメージは大きく
演目にも支障をきたしてしまったのであった。
今日の公演は終りだ。
いつもなら、直ぐにこの稽古場で練習を始める彼等だが
今日ばかりはさすがに皆、身体を休めている。
睡眠をとるも少なくないが
ほとんどが、それぞれに思うことを口にし、それらを共有する作業をしていた。
「ほんと…いろいろまずいよね。今日、お客さんにも言われちゃったよ。『今日は皆元気無いね。どしたの?』って。これ重症じゃね?」
「だな。俺らボロボロ過ぎだ…。てかさ、昨日俺達を殴ったのも、やっぱりルルちゃんたちお客さんだったんだよな?」
「あぁ…。正直言うと、今日も怖かったかも。またそんな人が出てくるんじゃないか とか。もちろん、んなわきゃないんだけどさ。」
「確かに。」
怖い。 どうやらこれは昨日、劇団員全員に植え付けられてしまった感情だったらしく
この意見には賛同する者が多かった。
「でもさ、きっと理由があったんだよね。ルルちゃんにも。じゃなきゃあそこまで本気にならないでしょ。」
それにも頷くメンバー達。
「紫苑さんのこと…殺すって言ってなかった?ルルちゃん。あれからどうなったんだろ。」
「篤志さんも心配だな。二人とも無事なのかな…。」
「あんだけ殴っといたくせに、俺達のことは逃がしてくれたじゃん?それも気になる。あと手当をしたのが誰なのかも。」
疑問は絶えないようだ。
--------------------------
佐々木「ハァ…。舞台は血まみれ。俺達もボロボロだし、紫苑さんと篤志さんは行方不明になっちまって。これからどうしたらいいんすかね〜。」
蓮が弱気になってぼやくのも、無理ないだろう…。
大事件の起きた昨日の定休日。その翌日、劇場は荒れ果てていた。
運よく近くのホールが空いていたため 今日の公演自体は中止せずに済んだが…
お客に対し、いつもどうりの芝居が観せられず、ミスも目立った。
一人無傷だった池堀に起こされ、皆が目覚めた時には、何者かによって傷の手当がなされており、傷の悪化は免れていた。
だがそれでも、彼等が受けた身体的、精神的なダメージは大きく
演目にも支障をきたしてしまったのであった。
今日の公演は終りだ。
いつもなら、直ぐにこの稽古場で練習を始める彼等だが
今日ばかりはさすがに皆、身体を休めている。
睡眠をとるも少なくないが
ほとんどが、それぞれに思うことを口にし、それらを共有する作業をしていた。
「ほんと…いろいろまずいよね。今日、お客さんにも言われちゃったよ。『今日は皆元気無いね。どしたの?』って。これ重症じゃね?」
「だな。俺らボロボロ過ぎだ…。てかさ、昨日俺達を殴ったのも、やっぱりルルちゃんたちお客さんだったんだよな?」
「あぁ…。正直言うと、今日も怖かったかも。またそんな人が出てくるんじゃないか とか。もちろん、んなわきゃないんだけどさ。」
「確かに。」
怖い。 どうやらこれは昨日、劇団員全員に植え付けられてしまった感情だったらしく
この意見には賛同する者が多かった。
「でもさ、きっと理由があったんだよね。ルルちゃんにも。じゃなきゃあそこまで本気にならないでしょ。」
それにも頷くメンバー達。
「紫苑さんのこと…殺すって言ってなかった?ルルちゃん。あれからどうなったんだろ。」
「篤志さんも心配だな。二人とも無事なのかな…。」
「あんだけ殴っといたくせに、俺達のことは逃がしてくれたじゃん?それも気になる。あと手当をしたのが誰なのかも。」
疑問は絶えないようだ。