茜色の葉書
「どうしたの?」

「え?」

 ドアにもたれかかっていた彼女が不思議そうな顔をして僕を見ていた。

 いつのまにか彼女は席を立っていたようだ。

 そりゃそうだ。人が突然消えるわけがない。

 でもいつのまに?

 初めてあったときもそうだったけれど、彼女は異様なほど存在感が薄い。

 人一倍他人を意識する僕がほとんど感じられないほどの存在感……。

 極端にいってしまえばそこに“人はいない”という感じ。

 やがて電車は完全に速度をなくし、僕らは両の手で足りるほどの人しかいないホームに降り立った。

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