茜色の葉書

ゆか

 何かがわかりかけていた。

 いや、初めからそれはわかっていたことなのかもしれない。

 僕は走った。

 洞窟のような商店街を、地図を買ったコンビニを、二人で眺めた海岸を、思い付く限りの場所を──

 しかし、彼女はどこにもいなかった。

 無一文の彼女が電車で帰れるはずがない。この街のどこかにいることは確かだ。

 やがて太陽が頂上にさしかかる頃、僕は砂浜で寝転んでいた。

 コートが砂だらけになるのも構わず大の字になって。

 もっとも、走り回っていたおかげで汗がコートにまで染み渡っていたから、いまさらどうでもいい感じもしたけれど。

 全身の疲労が睡魔となって、僕の瞼に襲いかかる。

 心地好い潮風と、BGMとしてはなかなかの潮騒を耳にしながら僕は深い眠りの回廊へと誘われていった。
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