リズ×望-お前の望むままに-
「え?」

望美は、見上げるリズヴァーンの顔に、よからぬものを感じる。

それと、同時に回された腕に力がこめられた。

「それは…どういう…。」

最後まで言い終わる前に、望美の唇はふさがれた。

優しい口付けによって。

「んっ…。」

体をよじっても、抱きしめられた腕からは逃れられず、口付けがより深いものになっていく。

「ちょっ…んっ…せんっ…せっ。」

唇は離れたと、思ったとたん、また深い口付けが望美を待っていた。

リズヴァーンの背中に望美の腕がまわり、着物を掴む手に力がこもる。

(だめっ)

望美は、快楽におぼれそうになる自分を、叱咤する。

だが、心とは裏腹に、腰の鈍痛が違うものになってくる。

「ふっぁ…ぁんっ。」

リズヴァーンの唇が、望美の首筋をなで上げる。

「あっ…。」

望美の声が、色を含み始める。

リズヴァーンは、いたずらな笑みを浮かべると、ゆっくりと望美の耳元でささやく。

「お前は、私の邪魔をしたいのであろう?」

優しく、諭すような言葉に、望美は顔を朱に染める。

「ならば、止めてみなさい。」

言うが早いか、全身をなで上げるその手は、器用に望美を快楽へと導いていく。

「せん…せ…。」

(だっ…だめっ!これ以上は…無理!)

望美は力の入らない腕で、リズヴァーンの手を掴む。

「おねが…い。やめてっ…ください…。」

ささやくような、その声に、リズヴァーンは望美の顔を覗き見る。

瞬間、目を見張った。

快楽と理性がせめぎあう濡れた瞳で、でも必死に流されまいとする望美は


…妖艶だった。

望美に触れていた手が止まる。

「っ…!」

リズヴァーンは、咄嗟に目をそらす。

そして、ほんの戯れだったはずの行為が、失策だったと気づく。

「せっ…せんせ?」

耳に届く、望美の声にまで、反応しそうになる。

このままでは、それでは己を制することが難しくなりそうだと、今度はリズヴァーンが耐えるべき立場に立たされた。

「…どうか…したんですか?」

いきなりのリズヴァーンの変化に望美は首を傾げる。

「…望美。」

リズヴァーンはゆっくりと息を吐き、望美の背に手を回す。

今度は、包むように、優しく望美を抱きしめる。

「戯れも、度が過ぎれば災いを招く。」

「…は…い…。」

望美は、小さな声で答えた。

リズヴァーンは苦笑する。

その言葉は、誰に向かって言われたのか。

望美は気づかない。



→後書き

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