リズ×望-お前の望むままに-
少し悩んだ末、望美はリズヴァーンに向き合いに座りなおし、冷静を装って話し始める。

(大丈夫。説明するだけなんだから。)

「その…私のいた世界では、…祝言を挙げるとき指輪を交換するんです。あげあうっていうのかな?左の薬指にお互いが同じ指輪をするんです。」

リズヴァーンにも、わかるように、こっちの言葉を考えながら話す。

「…それが、夫婦の証…なんです。」

普通の説明なのに、どんどん恥ずかしくなってくる。

「あっ、でも、しない人とかも、いるし…」

望美は、話していくうちに、だんだんと説明ではなくて、言い訳がましくなっていく。

「ただ、どんな感じかなぁって、…初めて先生にもらった指輪だったから…。」

(一緒に暮らしてるんだから、夫婦っぽいことしてみたかったんだもん!)

とも言えず、恥ずかしくて目線は指輪に釘付けになる。

「形もシンプルで、そんな感じだったし…。」

もう、最後のほうは、つぶやきにしかなっていない。

「…わかった。」

その優しい声につられて顔をあげると、そこには笑顔のリズヴァーンがいた。

「え?」

「左手の薬指に指輪をはめるのは、神子の世界では夫婦の証となるのだな。」

「はい。」

「神子は私からの指輪を、薬指にと望んだ。間違え、ないな。」

「…はい。」

(要点をまとめると、そうなるんだけど…)

「では神子は、私を『夫』だと思うのか?」

「えっ、あっ…それは…。」

面と向かって言われると、望美は何と答えていいかわからなくなった。

リズヴァーンにこそ、望美は聞きたかったのである。

私は先生にとってどんな存在なんですか?と。

それを、一番悩んでいたのは、望美本人なのだから。

答えず、ただ、悩みに暮れる望美をリズヴァーンは静かに見つめていた。
だが、一言、言葉をつける。

「…だがそうなると、神子は私の『妻』ということになるが…」

『つま』という響きに、望美は目を見開いた。

(そうか。先生が夫なら、私は妻なのね…。)

当たり前なことが、頭を駆け巡る。

「私はそう思って…よいのか?」

リズヴァーンは、迷うように視線を望美から少し、はずした。

(先生が私を妻って思ってくれるの?それって…)

やっと、状況が飲み込めてきた望美は、うれしさで、胸がいっぱいになる。

(それって、プロポーズ!?)

驚きと、喜びでリズヴァーンへの想いがあふれ出る。

やっと、ここにいることを許された気がした。

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