リズ×望-お前の望むままに-
望美が将臣の頭をかち割ろうと木刀を振り下ろすと同時に、望美の足がふわりと浮く。

腰を引き寄せられるままに、望美は後ろからリズヴァーンに抱えられた。

「せっ、先生!」

「望美、勝負は付いている。剣を下ろしなさい。」

「でっ!でも!」

「…望美。」

優しい声が望美の耳に届く。

ぴたっ

望美の木刀が止まる。

猫にまたたび。

泣く子にお菓子。

望美にリズヴァーン。

…好きな人に囁かれて誰が逆らえる?

「………。」

望美はゆっくりと木刀を下ろし、息を吐いた。

「…先生、耳元で話すのやめませんか?」

リズヴァーンの両腕で腰を抱かれ、力なく足を浮かせている望美が小声で呟く。

「何故だ?」

「…どうしてもです。」

耳まで赤くした望美の背でリズヴァーンが笑うのがわかった。

声がしなくても、気配でわかってしまう。

「先生、笑ってないで、降ろしてください。」

「わかった。そうしよう。」

ゆっくり、優しく下ろされても、腰からの腕は退かない。

「せ・ん・せ。これもです。」

リズヴァーンの腕に手を乗せながら天を見上げると、そこには空と同じ色の瞳が優しく望美を見つめている。

「…断るといったら?」

「…すごく…困ります。」

さっきの勢いは何処へやら。

望美は情けない顔を愛しい人に向ける羽目になっていた。

「俺も困るぜ。」

振り返ればそこには、頭を掻きながらニヤ付く幼馴染の顔。

「まっ、将臣くん!」

「わりぃが、そういうことは、家ん中でやってくれねぇか?さすがに学校でじゃまずいんじゃないか?」

ここぞとばかりの反撃に、望美は真っ赤になりながらも、つい木刀を握る手に力を込がこもる。

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