リズ×望-お前の望むままに-
望美がゆっくり目を開けると、そこには、リズヴァーンがいた。

優しく微笑むその姿に、もう『あなた』はいなくて、その瞳には私が映っている。

それが、うれしい。

一番好きな人。

今、心から愛しているのは、あなただから。

あなただけだから。

「先生。大好き。」

にこやかに笑って呟くと、再びその綺麗な顔が近づく。

そのキスはいつものキス。

大好きなリズヴァーンからのキスは、とろけそうなほど優しくて、望美はゆっくりと、手を首に回す。

リズヴァーンの大きな手が、望美を包み込んだ。

「先生のキス、お酒臭いです。」

「それは、すまない。」

少し咎めるような口ぶりをしてみても、しあわせすぎて望美に笑顔が浮かぶ。

謝る言葉とは裏腹に、リズヴァーンの顔も笑っていて、しあわせを二人で感じる。


何度も、何度もキスをすれば、望美の心から『あなた』が姿を消して、リズヴァーンでいっぱいになる。

この世で、すべての時空で、一番好きな人。

もう、この人は消えたりしない。

私だけの人。

「先生の好きな人って、私ですよね?」

キスの合間に、そう聞いてみる。

「あぁ、お前だけだ。」

その言葉は真実だから、望美はうれしくて、自分からキスをしてしまう。

一瞬、リズヴァーンは驚いたように目を開いた。

それでも、望美のつたないキスを受けてくれる。

そして、優しく抱きしめられた。

月明かりの中、その胸は暖かくて、ほっとする。

今は、私だけの場所。

『私』はもう、ここにはいない。

「…お前からの口付けは、初めてだ。」

優しく呟くその言葉に、望美ははっとした。

「そっ、そうでしたっけ?」

「あぁ。」

とぼけたように繕っても、リズヴァーンの声はうれしそうで、望美は真っ赤になる。

勢いって怖い…。

流されるまま、つい、自分からキスをしてしまった。

そんな事は今までに、一度もなかった。

本当に初めて。

その事実が、余計に望美の体温を上げていく。

恥ずかしくて、その場から逃れたくなる。

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