リズ×望-お前の望むままに-
「…先生?」

窺うように、小さくその名を呼んでみると、静かに腕が開かれた。

望美がそこから一歩離れ、振り返ると、少しだけうなだれているリズヴァーンがいた。

「…どうしました?」

(気持ちが悪いとか?)

望美は咄嗟に、リズヴァーンに近づき、その瞳を見上げた。

「お水。持ってきましょうか?」

そう声をかけると、少しだけ機嫌の良さそうな顔をするリズヴァーンと目が合った。

「…お前は、何をしても、私のそばから離れないのだな。」

ポツリと呟かれる声は、いつもの、望美の大好きな穏やかな声。

この状況で、『何をする気なんですか!?』とは、怖くて聞けない。

でも、リズヴァーンはその答えを待っているようにも見えて…。

望美はため息を一つ、ついた。

「…当たり前です。」

望美は腰に手を当て、怒ったようにリズヴァーンの前に立つ。

「目を離したら、何をするか分からないですもん。酔っ払いは!」

タチの悪い『酔っ払い』を少しだけお母さん気分で、諭してみる。

リズヴァーンが顔にうれしそうな笑みが浮かんだ。

「では、目を離さず、私だけを見ていなさい。」

そう、優しく笑った。


その顔が、穏やかで、柔らかなものでなければ『酔っ払ってるから』と思えただろう。

だが、目の前のリズヴァーンが、あまりにも幸せそうに笑うから。

その言葉がただの軽口ではなく、本当の気持ちに思えて。

望美は、つい、一緒になって笑ってしまった。

「はい。いつまでも見ています。」

そう、華のような笑みがこぼれた。
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