リズ×望-お前の望むままに-
それは愛しい人に触れられ、それをうれしいと思う心。

好きな人を乞う、心。

もっと求めてと願ってしまう心が、望美の体に火を灯す。

「…だ、から…ぁっ。」

息が艶を含み、甘さと共に望美の口から漏れる。

「せんっ、…ぇ…。」

その名が呼びたくても、音は息にしかならなくて…。

縋ろうにも、震える指先から溶けていく。

それでも、その瞳が見たくて、望美は体を捩った。

「せん…せっ、は…なし…聞いて…。」

小さな声で呟けば、すぐにその手は止まった。

望美の体の熱を知っているはずなのに、途中で行為をやめるのは焦らすためなのか。

さらに深く求めてしまいそうになる自分を必死に抑える。

小刻みにあがる息をそのままに、望美はリズヴァーンの衣にその指を絡ませた。

「…だから、どうしたのだ?」

明らかにからかうような声が聞えて、望美は精一杯、体をリズヴァーンに向ける。

そして、真っ赤な顔をしながらリズヴァーンを仰ぐ。

望美がリズヴァーンの瞳を真っ直ぐに見つめれば、その瞳が微かに潤んで揺れていることに気付く。

それは、熱に翻弄されているのは自分だけではないという証。

それでも、望美は流されるわけにはいかなかった。

「こんなこと…した後に…人に会うのは…いや…。」

気恥ずかしさに飲まれそうになりながらも、望美は言葉を紡ぎだす。

…そう、行為がイヤなわけじゃない。

ただ、その後に誰かに会うことが恥ずかしいのだ。

「だから…続きは、…みんなが帰った後に…。」

望美は覗き込むように、リズヴァーンの瞳を見上げた。

「…だめ…ですか?」

「―――っ!」

吐息のような声に、リズヴァーンが小さく息を飲む音が、望美にも聞えた。

濡れた瞳が絡み合う。

「…そのような瞳を…。」

息を吐くような小さな呟きと共に、ふっとリズヴァーンが視線を逸らす。

「…己を止めることができなくなる…。」

リズヴァーンはバツの悪そうな顔をして、すっと、触れていた手を離した。

そして、望美を優しく抱きしめた。

「せっ、…先生?」

< 59 / 65 >

この作品をシェア

pagetop