リズ×望-お前の望むままに-
それと同時に、リズヴァーンが望美の上から静かに体をずらし、再び、寄り添うように横になる。

「…ごめん、…なさい。」

上気した肌をそのままに、望美は小さく呟いた。

「お前が謝る必要はない。」

「でも…。」

リズヴァーンの瞳に未だ欲があるのを、望美は知っている。

それを、自分のせいで押し込めてしまうことに、戸惑いと、罪悪が浮かぶ。

「…謝るというのなら、もう、止めはせぬぞ?」

「………。」

本気とも冗談とも取れるその言葉に、赤い顔をして望美は黙った。

そんな望美の様子に、リズヴァーンがクスリと笑う。

「…それに、今日は始まったばかりだろう?」

悪戯な子供のように言われ望美は一瞬、目を瞠ったが、その意味に気付き、恥ずかしそうに笑い返した。

…そう、まだ、今は朝なのだ。

お互いの熱を求めるには早すぎる時間だし、今日という一日は長いのだ。

触れ合える距離に、いつも互いがいるのだから、焦らなくても大丈夫。

何度でも、二人でお互いの心と体をあわせることは出来る。

そう、今でなくても…。

「では、朝餉の準備をしよう。」

リズヴァーンが静かに体を起こした。

「じゃっ、私も…。」

その声に慌てて、望美も起き上がり衣の袷を整え始めた。

「お前は、先に顔を洗ってきなさい。朝餉は私が作ろう。」

「え?でも…。」

望美は困惑したような顔をリズヴァーンに向けた。

今日こそは作ろうと思っていたのだ。

そんな望美を見て、リズヴァーンが口元を緩めた。

「…お前は半刻で、朝餉の用意が出来るか?」

「はい?半刻ですか?」

半刻というと…三十分。

それで、ご飯とおかずを作るのは…。

「…無理です。」

望美は正直に答えた。

作りなれていない料理を、三十分で出来るとは思えない。

お米だって焚き上がらないだろう。

ただでさえ、いまだに勝手がよくわからない台所なのだから…。

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