Line ~何時ものセリフで~
雅人達は、お互い『責め』という名の
指輪を外し、今度こそ本当に想う人の
ところへ向かおうと、きちんと別れ、
雅人は家を出たと言っていた。


そのために出張が1週間延びたのだ
そうだ


雅人の話に、まさかそんなことになって
いたなんて思いもよらず、私はかなり
驚き動揺した

別れたと聞いて、はいそうですかと
勢いで飛び込めるほど若くないし、
きっと私には知り得ないことが二人には
沢山あったに違いない

言葉が見つからない…


どうにも反応出来ない私に気付いてなのか否か、雅人がふと思い出したように

「そういえば麗子が
『貴方の本当の想い人に伝えて、
酷いことをしてしまってごめんなさい
本当はあの目が合った時
感じていたのに…』って言ってたんだけど分かるか?」


瞬間、私の脳裏に初めて麗子さんを
見掛けた時の場面が蘇り、あの時感じた
感覚は彼女と同じだったのだと確信した
そして、彼女の言葉は私の背中をポンと
押してくれた気がした…

「勿論」

じんわりと視界が歪んでくるのを
感じながら微笑んだ。
< 31 / 40 >

この作品をシェア

pagetop