七物語
こんな美しい人も登山をしに来るのかと思うと、この仕事はまだまだ捨てたもんじゃないと思った。
「………氷山さん?……氷山さんっ…!」
「…あっ…!はい!」
カップルの女性に声をかけられて驚く。
「…火…消えちゃいますよ…?」
暖炉の中の火は燃えるものが無くなって徐々に小さくなっていた。
「…あっ…すいません……」
すぐさま木片を継ぎ足し、日報や手帳など燃えるものをさらに放り込んだ。
…にしても、この女は……
確かに今の男はこういう女がウケるんだろうな…
髪は何回か巻いて茶色に…
口は異常なぐらいの艶…アイプチ…つけまつげ…顔はファンデーションだらけ…小さなピアス…
雑誌の見過ぎで出来上がった典型的な例…
気持ち悪い…
氷山は雑誌のモデルのような着飾る日本人が大嫌いだ。
だからほとんどノーメイクで来たあの女性を見習ってほしい…そう言いたかった…
だからってどうこう変わることでもない…
どうでもよくなって視線を火に戻す…