七物語
「…んだよ!いねぇじゃねぇか…!」
特に人の気配はなかった。
確かに自分も、あの男性は今頃亡くなった奥さんのもとでおいおい泣いているのではないかと思った。
………だが…
それは近づいてみて初めて分かった……
「……おい…なんか……
……腕が二本になってねぇか…?」
雪から出ている二本の腕…
確かマサコさんが亡くなった時はマサコさんの腕一本が出ていたはず……
だが今…見るからに異なる腕が一本増えている…
そして見覚えのあるギラギラと光るシルバーの腕時計…
少し雪が積もっていたが男の腕に間違いないようだ…
「………おい…!」
男性がその後の言葉を出さなくても言いたいことは分かった。
「…でもどうやって!?誰が!」
説明がつくはずがなかった。