七物語



「………寒い…!」
「…こ…氷山(こおりやま)さん…!……ま…まだ頂上では……ないのでしょうか…?」
今回の登山者の中では最年長の夫婦が体をぶるぶるいわせて話しかけてきた。


「…もうちょっとです…!もうちょっとですから…!」
時間稼ぎのための言い訳を残し、さらに上を目指す。





「………うぅ~……」
一人気分転換でもしにきたのだろうか…
自分と同じぐらいの年の若い女性が凍えながら最後尾で後に続く。


雪山どころか登山に関してはまだ初心者なのか、足取りは重く、格好も普通の登山用のウェアーしか着ていない。


なんでもっと早く気づいてあげなかったのか後悔している。




登山前は活き活きしていたが、今では青ざめて今にも死にそうだった…







「…ミカ…大丈夫か…?」
「……うん…大丈夫だよ…」
若い男性と女性。
恐らくカップルだろう…



体がゴツい彼氏とは裏腹に、彼女は細身で、華奢(きゃしゃ)だった。





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