彼は私の金魚。


「ねえ、爺やお父様は?」
「旦那様は、急な商談で…」



お父様はこんな時にもお母様の傍にはいない。

いつもいつも仕事、仕事。

私は知ってる。

お母様が私に気づかれないように静かに泣いていたことを。



「爺や私、ちょっと出てくる」
「お嬢さま!」



爺やは私を止めようと手を伸ばした。



「爺や私に触れないで!」



伸ばされた手は私を掴む事は無かった。



「申し訳ありません。お嬢様。」



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