彼は私の金魚。
「神宮寺の旦那様は、奥様のご葬儀にもいらっしゃらないのね」
「お嬢様はまだ幼いのに…可哀想ね」
私を哀れむ親戚の声。
本当はそんな事みじんも思っていないくせに。
お母様は親戚からよく思われていなかった。
神宮寺家の一人息子をたぶらかした、いやしい女と。
そんな風に陰で言われてもお母様は親戚の悪口なんて
一言も言わなかった。
そんな優しい人なのに何で…
お母様…何で私を置いて行ったの?
あの日私は、唯一の心の支えを失った。