きみを好きになる瞬間
「…うん!」
ああ、単純だなあ結生って。
なんでそんな嬉しそうな顔するのかわかんないよ。
学校のみんながこんな結生見たらがっかりするかもね。
イヤホンから流れてきた曲も、私の好きな曲でちょっと切なくなった。
「おーっす、生き生きコンビ!」
次の日の朝、手をぶんぶんと降ってくる男子に私はみぞおちにパンチをくらわしてやった。
「ぐふっ」という呻き声と共にお腹を押さえてその場にへたれこむ男子。
「…さては咲ね。こいつにそんなくだらない名称を教えたのは」
「わあ~かわいそーに!ドンマイ、高橋!」
たった今私がぶん殴ってやったのは何故かやたら絡んでくる高橋。
正直うるさい。
「…平野が『生き生きコンビ』って言ってやるとおまえらが喜ぶって聞いたから……」
少し擦れた声で自分の無実を表明する高橋。
すぐそこの席では咲が「なんのことだか」と肩をすくめて知らないふりをしていた。