きみを好きになる瞬間


「さて…もう一度立ちたまえ高橋くん」

「やだ!やだよ!もう一回殴るつもりなんでしょ!?」

「その通りよ!」




いい笑顔でそう言うと、「ひいい」と高橋は床に這いつくばった。
正直そのまま踏んでやろうかとも思ったけど私の性分を周りに勘違いされたら困るのでさすがにやめておくことにした。




「生き生きコンビってなに?」



おもちゃを与えられた子供のような目をして結生がそわそわとし始める。



「おお…やっぱり北村はいいやつだな!」


いつのまに立っていたのか、高橋が結生に抱きついていた。


…そうだ、この二人が付き合えばもうなにもかも解決するんじゃないか。
うるさい高橋はもうこっちに寄ってこなくなるだろうし、結生も私にまとわりついてこなくなる。

最近は男性同士というのも多いらしいし、今なら私の寛大な心で許そう。



「うん…高橋くん、暑い」


…なんてことを考えること自体、ナンセンスだったらしい。
結生が高橋をべりっと引き剥がした。



いやそれにしても本当に高橋は暑苦しい。
そんなに暑い季節じゃないはずなのに。

高橋がいるだけで暑い。


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