きみを好きになる瞬間
『あれ?長谷川?わりーわりー、トイレ行っててさあ』
携帯から聞こえる高橋の声と、果てしなくどうでもいい情報。私は今それどころじゃない。
「…声、我慢しなよ」
顔は見えないのに、後ろから囁いてきた結生の顔は笑ってるんだと気付いた。
こんな、最低なことをして楽しんでる。
「……っ、ゃ、…」
『え?あれ?長谷川でいいんだよな?なんか用か?』
うごめく結生の手が気持ち悪い。
それなのに、背中らへんはぞくりとしていた。
「だ…っだめだってば…!」
『えー!?なにがー?』
高橋が返事をしてくるのを聞いて、私の声が電話の向こうに筒抜けになっているんだとはっとして慌てた。