きみを好きになる瞬間


満面の笑みでそう言われて、かちんとしつつも平然を装う。



「平野さん、弥生にそんなこと言わないであげてくれないかな」


どこからともなくひょこっと現れたその人物に私は顔をしかめる。
ちなみに平野とは咲の苗字のことだ。



「えーでも長谷川がいけないんだよ」


「そんなことないよ」



小さく微笑んで私をかばうのはまさしく結生。




「ちょ、ちょっと結生!なんでこっち来るの!」


「え、だって…」

私が声を荒げると、咲がのんびりと私を押さえた。



「まあまあいいじゃん、長谷川。今はあたしもいるんだし、北村くんはただクラスメイトと話してるだけなうですよ」



いや、言ってる意味がわからないし、なんだなうって。

肘をついてむすっとする。



「…私には近寄んないでって言ってるじゃん」


ぼそっと呟いて結生から窓へ視線を移す。


「ごめんね、弥生」




困ったように微笑した結生。

なんで笑うのかわかんない。普通、こんな風に邪険に扱われたらもっとこう…怒るとか、機嫌悪くなったりしないのかな。

やっぱり結生はクラスのみんなとはかけ離れてると思った。

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