-Vermillion-

「お、来た!俺達の懐かしい子供時代。西山も見てみろよ!」
「あんたは今でも子供でしょうが。でもまぁ……」
 
 真朱の写真は見てみたいかも――
 加奈の言い掛けた言葉が、手に取る様に分かる。
 思わず加奈から視線を逸らした。皆は写真に夢中になっている。
 
「朱乃可愛い!何か人形みたい。」
「そうかぁ?何か妖怪っぽい気が……」
「おい、爽!」
「いや!悪気はなくて、少し座敷童っぽいなって……」
「確かに、おかっぱ頭だしねぇ。」

 四人で写真を囲んで笑う今があまりに幸せ過ぎて、
 この平和な日々が永遠に続く事を、私は心から願った。
 いるかどうかも分からない神様に――

 セミダブルのベッドに加奈と二人で潜り込んで、向かい合った。
 真朱は隣の部屋、爽はリビングのソファーにいる。

「ねぇ朱乃、真朱って何が好きなの?」
「どうして…?」
「何言ってんの、もうすぐ真朱の誕生日でしょうが。」
「あ…」

 五月一日、月曜日。あと六日で真朱の十九歳の誕生日だ。

「真朱は何を貰ったら喜ぶんかねぇ。」
「甘い物、かな…」
「じゃ、一緒にケーキ焼こうか!」
「うん…」

 大好きな兄の誕生日を、今の今まで忘れていたなんて……
 私は強い雨音を耳を傾けつつ、罪悪感と劣等感を抱きながら、
 眠りに着いた。

――漆黒の闇の中を、一筋の光が照らしている。
  その光の先で大きな烏アゲハが、道案内をするかの様に舞う。
  そっと手を伸ばすと蝶は指先に止まり、ゆっくりと羽を動かした。  

  迷っておられるのですか、我が主様よ。
  ならば私は、貴女をお導きするのみ……――

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