-Vermillion-

 二件目は良く喋るおばあさんが出てきて、俺の相手をしてくれた。

「当初WNOの方には、大変お世話になりまして。」
「と、言いますと?」
「やだわ?
 朱い目の子供が生まれて戸惑っていた所を色々助けて頂いて。」
 
「当然の事をしたまでです。」
「しかも、毎月補助金まで頂いて……」
「それも……当然の事ですので。」
「うちの息子もお役に立てる時が来たら、いつでもおっしゃって下さいな。」

 電車に乗って中山に着いたのは、午後四時半だった。
「WNOの…?どうぞお入りください。」
「お邪魔します。娘さんの調子はいかがですか?」
「変わりなく……すみません、お役に立てませんで……」
「いえ。」
 
 この人からは何も引き出せないな……
 そう思った俺は適当に世間話をした後、早々に余山に向かった。

 中央線余山駅に着いたのは、午後五時半。
 最後の一件は余山市四町目の外れにある、
 ちょっと洒落たアパートの三階だった。

「誰?」
「あの、WNOの……」

 そこまで言うとドアが開いて、
 中から朱乃と同じ歳の女の子が顔を出した。
「入って。」

 1DKか……一人暮らしだな。思ったよりも綺麗に片づけられている。
「あんた初めて見る顔だね。新人?」
「はい。」
「ふうん。で、何の用?」
「あの聞きにくい事をお尋ねしますが、ご両親は……?」
 
「去年交通事故で二人とも死んだよ。
 でもWNOの人が遺産とか家の手続きとかやってくれたし、
 補助金も出てるし、全然一人で暮らしていけるから。」
 
「そうでしたか……ちなみにお体の方は?」
「何ともないよ。そっちに行ってみたい気もするんだけどね。」
「そっち?」
「WNOから来たんでしょ?あんた。」
< 31 / 101 >

この作品をシェア

pagetop