-Vermillion-
 アパートを出て時計を見ると、もう七時だった。
 今からバスで帰れば……
 
 バス停でバスを待ちながら、俺は頭をフル回転させた。
 書斎で見つけたファイルの中身は、
 日本で生まれた朱い瞳の子供達のリストだった。
 
 俺と朱乃を入れて合計七人。
 全員がこの辺りの地域で生まれている。
 日付は十五年前。俺が四歳で、朱乃が一歳の時の物だ。

 問題は、そのリストにあった俺と朱乃の部分だが……
―――


「真朱、ただいまぁ!……あれ……」
 玄関に勢い良く飛び込んだ加奈が、少し首を傾げた。
「どうかしたの…?」
「今日って木曜日だよね。真朱、まだ帰ってないみたいだけど。」
 
 木曜日は大学の授業が午後一で終わるし、アルバイトもない。
 夕食の材料でも買いに行ったのだろうか。
 先にリビングに行った加奈が大声で叫んだ。
「朱乃!書置きあるよー。」

<朱乃へ:
 昨日作ったカレーが余ってるから、温めて食べな。 真朱>

「またカレー…?」
「あんた、そこに突っ込むの?」
「どうして…?」
「心配でしょ?戻る時間くらい書いといて欲しいもんだよね。」
「うん…」

 前回の自分を思い出して、加奈の言葉が鋭く胸に刺さった。
 真朱は、こんな気持ちだったんだ……
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