-Vermillion-
#04「The Hierophant」逆位置 – 未熟

-AVRIL 26 (Jeu)-
 テレビのチャンネルを変えながら、真朱のシャワーが終わるのを待った。
 浴室のドアの開く音がして、バスタオルを持ち浴室へ向かう。
 ドアを開けた瞬間、鏡越しに真朱と目が合った。
 腰にバスタオル一枚の姿だ。
 「超級の美男子…」
 「な、何だよ。急にどうした?」
 「加奈が…前にも言ったよ…?」
 「そうだっけ?びっくりした。」

 真朱はフェイスクリームを塗って、動揺を隠す様に鏡を睨んだ。
 「ふうん、変なの…」

 湯船に溜まった柑橘系の爽やかな香りに身を沈めながら、
 最近の真朱の言動を振り返る。
 
 何だか妙だ。
 いつからなのかというと多分そう……一昨日の夜からだ。
 
 真朱があんなに動揺するなんて、あの時書斎で何をしていたのかな。
 気にはなるけど、書斎に行ってそれを確認するのは嫌だった。
 それではまるで真朱の事を疑っている様な、後ろめたい様な、
 そんな気がした。

 部屋に戻って思い切りベッドに倒れ込んだ。
 純白で統一されたこの空間が一番落ち着く。
 どんな色でもすごく映えるし、真夜中の月光もよく冴える。

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