-Vermillion-
-AVRIL 27 (Ven)-
 大きな雷鳴で目を覚ました。
 時計を見ると、もう十二時を回っていた。
 今日は建校記念日で休みだから、
 目覚ましを切って寝たんだっけ……


 昨晩閉め忘れたのか、カーテンも窓も開け放たれたままだ。
 今日も酷い雨らしい。

 風が運び入れた雨で窓辺が濡れている。私は起き上がって窓を閉めた。
 ふと肩に、烏アゲハが止まっているのに気付いた。
 そっと羽に触れてみる。

「あら、窓から入っちゃったの…?」
‐お早うございます、主様。
「……っ!……蝶が、喋った…?」
‐我が名は美影。貴女にお仕えする者でございます。

 リビングに降りると、真朱はもう学校に行っていた。
 テーブルの書置きを手に取る。

<朱乃へ 
 サンドウィッチ作ったから、遅い朝ごはんにどうぞ。真朱より>

 サンドウィッチをかじりながら、真朱がいない事に内心ほっとする。
 蝶の事を絶対に聞かれるだろうから……まだ話さずに済んで良かった。

 午後になると、時間を持て余した爽と加奈が遊びに来た。
「何、この蝶!随分リアルな飾りだね。」
「水野の肩に乗ってんだから、ペットじゃん?」
「これ生きてるの?」
「当たり前だろ?ほらちょっと動いた。」

 加奈はひたすら気味悪がっているけど、
 爽はそれほど違和感もなさそうに言った。
 その会話を聞いて改めて、これが普通じゃないと実感する。

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