-Vermillion-

 三人で対戦ゲームをしながら、真朱の誕生会について話し合った。
「今日は二十七日だから、準備する時間は十分あるな。」
「あたし達は前日にケーキ焼く事にした。飾り付けはどうする?」
「折り紙なら、沢山あるよ…」

 夕方まで飾り物作りをした後、
 明日買い出しに行く約束をして、二人は帰って行った。
 時間は午後六時。
 そろそろ真朱が家庭教師のバイトから帰ってくる時間だ。
 私は部屋に戻ると、そっと机の引き出しを開けた。
 綺麗に包装された小さな箱がある。
 
 時間を上手に体感出来ない私が、当日になって気づいても大丈夫な様に、
 ずっと前から用意していた真朱への誕生日プレゼントだ。

「真朱は、喜んでくれるかな…?」
‐お気に召す事、間違いないでしょう。
「どうして、ずっと傍にいるの…?」
‐私は貴女に仕える者ですから。
「どうして、言葉を話せるの…?」
‐ただの蝶ではありませんので。
「じゃあ、何なの…?」
‐地獄蝶ですよ、主様。

 下の階で鍵が回る音と声がして、慌てて階段を下りる。
 地獄……今何て?

「ただいま!朱乃、いるかー?」
「真朱おかえり…!」
「今日はハンバーグ……ん、それどうしたの?」
「これ…?これは…」

 私は肩を見下ろした。大きな烏アゲハが羽を動かしている。
「昨日の夜、窓から入ったみたい…私のペットなの…」
「ペット?ふーん。」

 真朱は然程気にする様子もなく、少し上の空で夕食の準備を始めた。
 いつもなら絶対にあれこれ聞くはずなのに……
 そんな無関心さが少し寂しく感じる。
 
 何に気を取られているのか……最近いつも考え事をしているみたい。
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